2021年11月27日
昨年、STAY HOME企画の一環として投稿された芸術監督のインタビュー記事をリメイクしてお届けします。
Orchestra Mµsicart とは
Orchestra Mµsicart とはどのようなオーケストラなのでしょうか
-Orchestra Mµsicart は「音楽環境つくり」「新制作への挑戦」「アート文化の発展」の3つの理念を掲げたアマチュア・オーケストラであり、これまで音楽をやっていたけれど、場所がないという方、これから新しく音楽を始めたいけれど、敷居が高いといった方などに向けて広く門戸が開かれたオーケストラです。
新制作への挑戦というのは一体どのようなことでしょうか
-これまでのクラシックコンサートではないような企画を実現していくという思いが込められています。クラシックコンサートに馴染みのないゲストの方々にも足を運んでもらいたいという考えから理念の1つに加えさせていただきました。
アマチュア・オーケストラでしかできない実験みたいなことでも、面白いことならやってしまおうという考えがあるので、びっくりするゲストの方もいらっしゃるのかと思います。
びっくりする仕掛けみたいなものですか
-そうですね。第1回のコンサートでは、コンサートホールでスモークを使ったのですが、驚いているゲストの方もいらっしゃいました。
中々すごいですね。ちょっと火事みたいですが(笑)
-そうですね(笑)実際、本番直前にスモークを焚き過ぎたこともあって、会場が煙に包まれてしまって、ちょっと加減を誤ったなあと(笑)
色々な実験的な要素もあるということですが、アイデアなどは芸術監督から出すのでしょうか。
-前回の公演は初公演だったため、基礎となるアイデアは自分が出しました。ただ、照明の色やタイミング、映像に関しては大部分が演出チームのアイデアで決まりました。
初公演「Orchestra Mµsicart 光と魔法のコンサート in 森のホール21」について
初公演「Orchestra Mµsicart 光と魔法のコンサート in 森のホール21」はどのように作られたのですか。
-最初に決めていたことは、このコンサートはオーケストラ・映像・照明の3つの要素で作るということです。これは、2018年の11月くらいには決めていたので、約1年前には決めていたことになります。そこから、オーケストラの立ち上げと並行して映像や照明の準備を始めました。
映像に関してはどのように決まったのでしょうか。
-当初の予定では、演奏する3曲全てに映像が連動させるつもりでした。しかし、交響曲で言えば約50分、全体で90分近い映像を、しかもオーケストラの演奏に連動する映像を作るのは骨が折れるということで、少しアイデアを変更しました。それが交響曲に関しては楽章のイメージ画を静止画として映し出し、フレームを動画にするというアイデアです。それによって映像制作の負担が軽減されると考えました。
映像が単調になるとは思わなかったのですか。
-痛いところをつきますね(笑)実際、アンケートでそういったお言葉も頂きました。しかし、負担を軽減することと同時に考えたのは、映像主体になり過ぎているのでは、ということです。あくまでコンサートなので、映像が主体になり過ぎるのは主旨から逸れると考え、結果として交響曲はイメージをもとに音楽を聴いてもらうことに重点を置きました。
映像のアイデアも芸術監督が出したのでしょうか。
-《幻想交響曲》に関しては曲にストーリーが内在しているので、そのイメージは伝えました。ただ、自分は全く絵が描けないので、残りのイメージは全て演出チームのクリエイター陣によるものです。
自分が全く絵が書けないというのもあるのですが、初期のイメージ画だけで凄いなって思いました。曲から感じ取れる感情描写のようなものが、イメージ画とぴったり合うので。
ここから映像が少しずつ出来上がっていくんですね。
-そうですね。《幻想交響曲》はこのイメージ画をもとに完成に近づいていきます。一方で、《バレエ組曲「牝鹿」》は全く想像しない方向に進んでいきました。
芸術監督でも想像しない方向ですか。
-はい(笑)全く想像できなかったです。まさか、料理することになるとは思わなかったので。
これは、料理ですね。
-料理です。2番目に演奏した《バレエ組曲「牝鹿」》は5種類の調理風景が映し出されました。
お客さんは戸惑うのでは……?
-そうですね、この音楽と映像の組み合わせは一番賛否を分けたと思います。この映像に関しては、ベースからクリエイターに投げたのですが、自分は非常に面白い作品だと思いました。この映像の面白さは「ズレ感」とその「異質さ」にあると考えています。
「ズレ感」と「異質さ」ですか。
-はい。この映像と音楽を組み合わせる際に、音楽の要所と映像を合わせるかどうかについて話をしたのですが、最後以外合わせないという結論に至りました。それは、音楽とあえて映像が揃わないところに面白さがあるからです。音楽と映像が揃わない「ズレ感」、そしてそれを気持ち悪いと感じる「異質さ」がこの映像作品の根幹にあり、それの不思議な感覚をゲストには体験してもらいたいと思いました。
映像とぴったり合わせるようなことはしなかったのでしょうか。
-それに関しては、《死の舞踏》で挑戦しました。本番も含めて、凄く大変でしたが……。(②に続く)